イスラエル パレスチナ情勢 ガザ地区の実態は?特派員に聞く

NHKニュースより引用

「国際報道 2024」では、視聴者の皆さんから寄せられた質問や意見をもとに、国際情勢を深掘りする特集に取り組んでいます。

4月5日の放送では「イスラエルパレスチナ情勢」について専門家や特派員とともに徹底分析したほか、18日には「午後LIVE ニュースーン」に栗原キャスターが出演し、特派員にさらに深掘りした内容をお伝えしました。

NHKプラスで見逃し配信
「午後LIVE ニュースーン」と「国際報道 2024」のコラボ企画は
放送から1週間 NHKプラスで見逃し配信されます。
配信は【4月25日(木)午後3:54まで】です

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024041814570?t=483

画像をクリックすると見逃し配信が見られます
【4月25日(木)午後3:54まで】

今回の放送で視聴者から集まった声は330以上にのぼります。

その中にも例えば、
△「イスラエルパレスチナを含む中東地域を越えて、世界各地でテロが勃発する危険性は高まっているのでしょうか?」(50代医療従事者)
△「これまでになく全世界が争いに巻き込まれる危機感を感じています」(50代看護師)など、情勢の悪化を心配する声が寄せられていました。

そして、今回のアンケートで視聴者から多かったのが、
△「ガザ地区の実態をもっと知りたい」という声でした。

そこで、現地で取材する記者に、こうした声をぶつけてみました。

NHKニュースより引用

NHKエルサレム支局の田村佑輔支局長。
この半年間、イスラエルパレスチナ双方の現状をつぶさに取材してきました。

1.ガザ地区の現状は

△食料が足りないとの報道を見ると、心が痛みます。
攻撃があるたび、民間人の死者数が発表されますが、実際は飢餓で亡くなる方はいないのでしょうか。

これを取材していて、どのように見ていますか。

栄養失調で亡くなる子どもも

NHKニュースより引用

食料の状況はですね、地域によって差はありますが、ガザ地区では全体的に相当深刻な状態が続いて、はい、特に現地の保健当局が発表していることとしては、すでに飢えで栄養失調から亡くなる子どもも出ているんですね。そして、今月の初めに避難所の状況について、国連機関のUNRWAの職員の方に話を聞きました。

一つの避難所というのはもともと最大3000人ぐらいが入ることを想定して準備されていたと、ただ今現在はそこの避難所にですね、数万人が登録をしているといった状況だそうです。

非常に身につまされる数字をその職員の方は教えてくれたんですが、単純計算しただけで800人にトイレが一つ。また3000人にシャワーが一つあるような状況だと、大変衛生環境としてよくない状況が続いているということでした。

医薬品の不足いまだに深刻

そして、特に医薬品の不足というのが、いまだに深刻だという話を聞きます。

特に子どもの抗生物質ですとか、衛生環境が悪くなっていることから来る皮膚の感染症の薬ですとか、また避難生活を送る中で、どうしても避難者の皆さんは気分が落ち込んでしまいますから、抗うつ剤ですとか、そういった薬の不足がですね、いまだに課題になっているということでした。

2.現地での取材は

NHKニュースより引用

私たちNHKの取材に対しても視聴者から質問が届いています。
田村さんも現地ガザ地区に直接入ることが今難しい状況なんですよね。

はいそうなんです。

以前はガザ地区に入ることもできたんですが、この軍事衝突が始まってからイスラエル軍ガザ地区への報道機関のアクセスというのを原則認めていません。

なので、NHKとしてはもともとガザ地区に住んでいる現地のカメラマン、サラームカメラマンという現地カメラマンがいるんですけれども、彼の取材を通して日本の方に情報を伝えているという形になります。

 

ご自身もラファの避難のテントで暮らしながら取材を続けているんですよね。いつもどんな気持ちでそれを受け取って、あるいはやりとりしているんですか

 

ガザ地区には安全なところなんてありませんから”

NHKニュースより引用

非常に現地の様子がつぶさにわかるので、大変胸が締めつけられる思いになります。

例えば、食料不足に苦しんでいるラファの家族を取材するときなんかは、やっぱり彼らの身につまされるようなインタビュー送られてくるわけですし、また1日1食、本当に質素なごはんだけで生き延びている家族の映像などが送られてくるわけなんですけれども、大変現地の実情をかなり強く感じて、つらい気持ちになることが多いです。

 

サラームカメラマンが避難しているラファでも空爆がたびたび行われているんですけれども、また、彼が取材に行くときですね、本当に無理はしないようにと、安全を第一に取材をしてくれということを伝えています。

 

ただ、彼がたびたび伝えてくるのは「いやいや、もうガザ地区には安全なところなんてありませんから」ということを返事をしてくるわけなんです。

 

確かにそうなのかもしれませんが、安全を確保してほしいというこちらの気持ちと、またどこに行っても一緒だと、ここに安全なところはないんだという彼の現地からの声のギャップを感じてしまっています。

3.ガザ地区の人にとってのハマス

今回、視聴者からは
パレスチナ人ガザの人がハマスのことをどう思っているのか
こういう疑問も多かったんですが、取材からどんなことを感じますか。

ハマスをいまだに支持 かなり少ない”

ガザ地区の住民に関して言いますと、これまで15年以上ハマスによる強権的な統治を経験してきて、ハマスはまた汚職もはびこっていると指摘されてきました。

なのでガザ地区では、ハマスへの住民からの支持がもともとものすごく盤石だったかというと、そうとも言えないと思います。

そして、去年10月7日のハマスによる越境攻撃の結果、ガザ地区では3万人以上がイスラエル軍の攻撃で犠牲になって、そして170万人が住む場所を追われてしまっているわけですよね。

もちろん、その攻撃を行っているイスラエルに住民の怒りは向かっていますけれども、このような事態を招いたハマスのことをいまだに支持している人というのはかなり少ないと言われています。

ただ、それをわれわれがインタビューをしても、カメラの前で言える人というのはあまり多くないです。

皆さん心のうちで思っていることという印象があります。

4.今後をどう見るか

NHKニュースより引用

そして、視聴者からは
イスラエルの攻撃はいつまで続くのか見通しは立っているのか知りたい
という声もあったんですが。

田村さん、現地ではどんな見方がありますか?
イスラエルとしてはハマスの部隊を壊滅させるために、ラファへの地上作戦は欠かせないものだと、そういう姿勢を崩していないんです。

ただ、ラファには多くの人が避難していますので、地上作戦が行われれば本当に大惨事になることが懸念されています。もう半年間にわたって多くの人がラファで避難生活を送っていて、もうすでにそこに多くの人の生活インフラがある程度整っていて、また人道支援物資を配布する仕組みもそこで構築されているわけなんです。どういった形になるかは予想できませんが、やはりラファにハマスの部隊が残っていると、イスラエル側が主張していて、軍事的なインフラも残っているとみられることから、それを破壊しないで軍事作戦の終結というのを宣言することは考えづらいのではと思っています。

ただ、アメリカが懸念を示していたり、そういったことでどれだけ実際に作戦を実行するまでに時間を稼ぐことができるのか。

そういったことが今焦点になっているのかなと思います。

NHKニュースより引用